サイバー大学
| 心意気はいいのだが、IT総合学部は何がしたいのか? |
IT業界で圧倒的に人材が足りないのは、企業向けの業務システム開発をきちんと行える人材である。長ったらしいので、以後EITと略す(EはEnterpriseの略)。一般的な言葉ではないので、注意してください。
EITに従事する人が、最もニーズが多く、最も人材が足りない。まずはこれを踏まえて欲しい。
高度のプログラミングやコンテンツ制作のできる人も足りないのであるが、ニーズに対する圧倒的な不足感は私は聞かないし、これらに従事している人たちは、好きでやっている面もあるので、そもそも大学での教育が必要かどうかは疑問符がつく。
もちろん、世界レベルのOSやネットワークソフトなどを設計できるアーキテクトは日本の将来のために必要であるが、こういう人たちは研究員に近く、EIT提供企業の即戦力ではない。
大学やパッケージベンダの研究職で構わないし、不足感はあるかもしれないが、取り組みは東大や慶応大学を初めとする大学でなされている(はずだ)。
さて、話題のサイバー大学であるが、さすが吉村作治学長だけあって、志は非常に高いものを感じた。
「大学教育の現場が抱える矛盾や非効率、あるいは学校側が授業を受ける学生たちに押し付けている不公平を正したい」
「サイバー大学は入試はしません」「教育というのは、できない子をできる子にすることでしょう?」
「利潤」で「国立大学並みの研究を支給する」
スタート時点で「世界遺産学部」というのがあるのは、学長のカラーが出ていて頷けるものがあるが、もう一方の「IT総合学部」には疑問を感じざるを得ない。
「プラクティカル」だと@ITの記事では持ち上げるが、「コンテンツ制作」について現場の一線で活躍するビジネスマンによる講義があるほか、長期間のインターンシップ制度や(中略)メニューを充実させているという程度の解説しかない。
ソフトバンクがスポンサーだから仕方のないところもあるのだろうが、記事を読む限りでは、吉村学長もIT総合学部の位置づけについては明確な回答を持っていないようだ。
EIT開発従事者の人材不足という観点で考えると、今のカリキュラムよりも優先的に教えて欲しいことがいくつかある。仮に4年制として、次のことは教えて欲しい。
まずは、コンピュータのアーキテクチャー。
多くの大学で実施されていると聞くが、「SWEBOOK」をきちんと教えた上で、ハードウェアのサイジングやネットワークの設計、基本ソフトウェアの選定などの能力を磨いて欲しい。
多くのAjail系技術者は「SWEBOOK」はだめだというが、基本は基本であり、それらを踏まえた上で、Ajailの世界に入っていってもらわないと、少なくとも日本のEIT開発は難しい。
次にソフトウェア開発の基礎。
DOA、OOAなど要件定義や設計の基礎をきちんと教えてもらいたい。特に業務分析ができないと話にならないので、徹底的に教えて欲しい。
これら二つだけでも多岐に渡るが、2年もみっちり教えれば、その辺のEIT提供業者に10年ぐらいいる平均的な技術者よりも優秀な人が出るであろう。
そして、後半の2年は実務能力。
RFPを読み解き提案書をきちんと作成できるだけの文書読解・作成能力やプレゼンテーション能力、交渉能力、メンバーシップとリーダシップ、コミュニケーション能力など現場で必要な能力。
財務諸表の読み方、簿記の知識など企業会計に関わる知識。
プロジェクトマネジメントの基本、PMBOKなどのトータルな体系はもちろん、進捗管理や品質管理、コスト管理などの実務のやり方、最も難しい外注管理についても教えて欲しい。
まだまだあるが、今EITの現場で最も必要とされている能力はだいたい網羅されていると思う。
本来これだけの能力を大学で身に着けるには、工学部はもちろんのこと、商学部的な知識も必要である。だから、普通は大学だけでは身に着かず、企業教育ということになる。
しかし、せっかく「IT総合学部」というのがあって、即戦力を社会に出したいということであるのなら、こういうことを教えてもらいたいと思うのである。
いくら良い講師がきてくれたとしても、「コンテンツ制作」をメインに教えてもらっても、IT業界で何を実際にやっているのか分からないではないか。
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